タイムトリップしますか?

一問一答

〇「タイムトリップとは何ですか?」
文字通り時間旅行です。
ただし未来へは行けません。
時間と場所はセットになっていますから、正確には「過去に存在した場所に旅行すること」がタイムトリップです。

〇「なぜ、タイムトリップできるのですか?」
わかりません。

〇「どうしたらタイムトリップできるのですか?」
たいむとりっぷ屋に行って注文するだけです。

〇「たいむとりっぷ屋とは何ですか」
客にタイムトリップをさせる店です。
店の構造はカラオケボックスに似ています。
店内一列に5つか6つ個室が並んでいます。
個室には窓がなく照明は薄暗い。
BGMは明るい感じのイタリアン・バロックかやや陰りのあるドイツ・バロックか。
ヴィヴァルディのマンドリンかバッハのハープシコードかチェロ。

〇「そこでどうすればタイムトリップできるのですか?」
部屋に備え付けの用紙に行きたい場所(人物)と日付、滞在期間を書いて店員に渡すだけです。
しばらくすると店員がノートパソコンと飲み物を持ってきます。
店員はgoogle earthらしき地図アプリで行きたい場所を特定し日付と滞在期間を入力して去ります。
客は店員が置いていった飲み物を飲んでソファーに横たわっていれば、数分後にはトリップします。
飲み物は大豆コーヒーのような味の時もあればオレンジマンゴーティーのような味の時もあります。
飲み物がタイムトリップを誘発するのかもしれません。
器はいつも同じ、微妙に左右非対称の陶器のカップです。アールヌーボーですね。

〇「失敗したことはありますか」
あります。行きたい場所(人物)と日付はできるだけ具体的に書かないと失敗します。
モーツァルトの全盛期に会いたいと思い「1,785年のモーツァルト」と書いたら、レオポルト・モーツァルト(パパモーツアルト)に会うことになってしまいました。
ウィーンのモーツァルトと書くべきでした。レオポルトはザルツブルグにいたはずですから。

〇「これまで会った人は?」
モーツァルト(2回)、バッハ、ベートーヴェン、ヴィヴァルディ、チャイコフスキー、ショパン、…。
ルノアール、ゴヤ、ゴッホ、ゴーギャン、若冲、北斎、…。
ナポレオン、信長、ルードヴィッヒ2世、諸葛亮孔明、…。
トルストイ、子規、蕪村、…。
キリスト、空海…。

〇「コミュニケーションできるのですか?」
いまのところ、一方通行ですね。
相手が話していること、考えていることは伝わってきます。
瞬時に心の声まで自動翻訳されているようです。

〇「魂だけがトリップするのですか?」
そうです。
僕の存在は相手には見えません。
僕は相手のやや斜め上から見ています。

〇「一種の麻薬でトリップしているだけではないですか?」
それはないと思いますが、定かではありません。
未知の事物に出逢いますから、脳内のデータ(経験知)の外にトリップしていることは間違いありません。
楽しみの期待感でドーパミンとかの脳内麻薬が分泌され、それがトリップを援助するということはあるかもしれませんね。

〇「習慣性、依存性は?」
それはないと思います。
忙しければ1カ月ぐらいトリップしにいかないこともありますから。

〇「滞在期間と実時間の関係は?」
滞在期間が1時間でも1カ月でも1年でも、実際の時間は10分足らずだろうと思います。トリップに入る時にヴィヴァルディの四季の春の第1楽章がかかっていて、トリップが終わった時にまだ同じ春の第3楽章がかかっていたりしますから。
邯鄲の夢、高粱一炊の夢よりも短いかもしれません。
科学的に説明できない時の流れというのがあります。
死に臨んで、自分の全人生の来し方を猛スピードの走馬灯のように見るというような現象は説明できないですね。
モーツァルトは一瞬にして交響曲を聞いた、と言われています。
一瞬にして永遠を見る、ということもあり得ますね。

〇「帰ることができなくなるということはないのですか?」
わかりません。
少なくとも僕は帰れなかったことはないです。現にここにいますから。
帰り方は簡単です。「そろそろ帰りたい」と念じればよいのです。

喫茶店での編集者との質疑応答は1時間以上続いた。
僕はケーキセットのおかわりをした。
1回目はモンブランとコーヒー、2回目はシフォンと紅茶。
ケーキはメニューに表示されていないので、いちいち席を立って、レジ近くのガラスケースに行き、指定しなくてはならない。ユーザーフレンドリーのシステムではない。田舎の喫茶店やな。

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